パパ男が「ノゾキ」とよばれる一ノ倉沢の景勝地で、足を止め、熱心に写真を撮ろうとしているのを
ぴろ子は知っていた。
しかしぴろ子は足を止めなかった。
ずっとパパの後ろを、歩いていたぴろ子。不機嫌を隠そうともせず、ムッツリ黙り込んだり
悪態をついたり・・・いいかげん自分にウンザリしていた。
ぴろ子が一番イラついてる原因は自分自身なのだ。
自分に腹を立ててるのだ。もうずい分前からその事に気付いてた。
ただ、パパ男が近くにいると、声をかけられると、
イラつきをぶつける事を抑えられないのだ。そしてそんな自分に余計腹が立ってしまう。
時折、座り込んで、パパ男に先に行くよう促すが、パパ男は短く「わかった」
と応え、ガスの中に姿は消すが、少し進んだ所でぴろ子を待っている。
結局、離れないのだ。
ノゾキでパパ男が足を止めた時、振り切るように追い抜き、
ガムシャラに歩き出したぴろ子の子供じみた行動は
いい加減、この楽しくない山歩きを終わりにしたかった。
楽しくない山歩きの原因を作っている自分を何とか元にもどしたかったのだ。
独り、滑りやすい岩場を越え、緊張を強いられ、無心になる頃
ぴろ子は冷静になっていった。
馬蹄形をやると、言い出したパパ男を責め続けたぴろ子だが
強固に反対するのをめんどくさがったのは自分自身だ。
そして、自分ではロクにリサーチもせず、この山行に臨んだのは
夏に飯豊山に登れたという、間違った自信と傲りがあった事は否めない。
心のどこかに「何とかやれるんじゃないか」という安直な気持ちがあったのだ。
それが少し思うようにいかなかった事で、不満となり爆発した
自分の幼稚さと愚かさが何よりも悔しかった。
大好きな山歩きを台無しにした自分の行動と、それを終始、冷静に受け流していた
パパ男の姿を思い浮かべる。
このまま、ゴールしてはならない。
ここから残り、2時間余りの山行で少しでも「ぴろりん隊の山歩き」に戻さなくては・・・
ぴろ子はパパ男を待った。
暫くすると、ガスの中から静かにパパ男が現れた。
岩に座り込んでるぴろ子を見て、一瞬驚いたような表情をみせたが
すぐにホッとしたような顔で「そんなに急ぐと危ないから・・」と呟き
ぴろ子も黙ってパパ男の後ろについた。
5年前に谷川岳に登った時も、オキの耳、トマの耳山頂は真っ白だった。
この山で、スッキリと晴れた山頂を踏める確率は相当低いんじゃないだろうか
他のブログ記事の写真を見ても、ガスで真っ白な山頂の時の方が多い。
この山も、ぴろ子とよく似て我が儘の気難しやさんなのかもしれない・・・・
「相性悪いね!」
苦笑いを浮かべながら、最後の文句を言い放った。
肩の小屋を過ぎると、青空が見えてきた。
ものすごい風が、一気に濃厚だったガスを吹き飛ばしているようだ。
天神尾根で遭難者がいるようで、救助ヘリが出ている。
この強風では県警ヘリは飛ばないのだろう、あまり見かけた事がない民間ヘリの救助だ。
何度もホバリングと撤退を繰り返しながら、救助のチャンスを伺ってるようだ。
そんな様子を見ながら下っていると、ブロッケンが現れた。
ちょうどザンゲ岩にパパ男が登った時だった。
「ぴろ子も登って来いよ~ほら!ブロッケンだよ!!」
「もうそんな気力ありませ~~ん!」
(ザンゲする事がありすぎて、登ったら最後、下りてこれませんよ~)
心の中でザンゲしながら、ブロッケンに興奮するパパ男を見上げていた。
どうやら、救助も成功したようだ。
お陽さまも輝きだした。
そして、厳しかった谷川岳馬蹄形縦走は終わった。
終わり
~エピローグ~
ロープウェイ土合駅で、ぴろりんは荷物番をしながら、車を取りに行ったパパを待っていた。
もうクタクタで、沈み込むようにベンチに腰掛けていると
ヘルメットを被り、ガチャもんをブラさげた若者のPTが楽しそうにロープウェイから下りてきて談笑
しながら、ぴろりんの傍に立った。
ぴろりんの足元に置いてある、パパのデカいザックを見て話しかけてくる。
「え・・・まさか、これ担いできたんじゃないっすよね??」
「いえ・・これはダンナのザックですよ・・」
疲れてて話すのが億劫だった。それでも、若者はおかまいなしに興味深げに話しかける
「すごい荷物ですね~テン泊?まさか馬蹄形とか?」
「ああ・・そうです」
「うわ~~すげ~な!やりますね~!!」
テンション高い若者に対して、あまりにも素っ気ない返事をしてしまい、悪いな・・と思い
一見した所クライミング装備の若者に
「え~でもそちらは、一ノ倉やってきたんでしょ~?その方が大したもんですよ」
社交辞令を返すと・・・
「一ノ倉っても岩登りじゃないっすよ~俺達、天神から一ノ倉岳ピストンしてきただけで
もうバテバテっすよ~すげ~な~馬蹄形!!カッコいいな~~!!」
(Σ(・ω・ノ)ノえっ!一ノ倉岳ピストン・・ってその装備は・・・って
よく見たら、オイラと同じお手軽ヘルメットにスリングと細引の紐かい!カラビナばっかやたら
大きいから気がつかなかったぜ;;)
・・とチョイとズッコケながらも、元気に楽しげな若者たちを見て、ぴろりんは思った
登山に、もし勝敗があるとしたら、この勝負、確実にぴろりんの負け。
そんな元気な笑顔で下山してきた君達の勝利だな!
登山ってそーゆーもんだ♪
そして、このブログを書いていた時、ブロ友さんから素敵な情報が^^
朝日岳まで一緒に歩いてきたワンちゃん連れの登山者さん♪
ヤフブロガーさんだったようで、しかも、家はなんとぴろりん家と同じ市内
つーか、かなり近いと思う!
素敵な出逢いだったのです~♪また会えるといいな~^^
その、登山者さん、「飛行船」さんの記事はこちら^^
ぴろりん隊も度々、写真に登場しちゃってますので探してみてね~♪
飛行船さんの記事はこちら→谷川連峰 犬連れ12時間登山その1 松ノ木沢の頭
今回は小説風に、しかしながら。。ぴろりんの心情を、弱さを、情けなさを
包み隠さず文章にしてみました^^
いかがでしたか?
次回から、また。。いつものぴろりんレポに戻ります~
ィェ━━v(o´∀`o)v━━ィッ